依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク

株式会社東京スポーツ新聞社への要望を提出

依存症問題の正しい報道を求めるネットワークは、2021年4月29日付記事に対し、同年4月30日に株式会社東京スポーツ新聞社に対し要望書を提出しました。
以下は、そのテキストになります。

「高知東生ルートで覚醒剤入手か」の記事に強く抗議し、削除と謝罪訂正を求めます

「依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク」は、依存症支援に取り組む団体と専門家が 2016 年に立ち上げたネットワークです。人権侵害に及ぶ過剰な薬物報道を受け、2017 年には「薬物報道ガイドライン」を作成、2018 年には依存症啓発に役立つ報道に対する「グッド・プレス賞」を発足させるなど、依存症の偏見是正に取り組んでいます。

2021 年 4 月 29 日に東スポ Web で配信された「ドン・ファン妻 須藤早貴容疑者『高知東生ルート』で覚醒剤入手か 成分ほぼ同一」の記事は、事件となんら関係ない高知東生氏に対する名誉毀損であると同時に、違法薬物問題に対する誤解や偏見を助長し社会復帰を阻害するものであり、強い憤りを感じます。

記事では「16 年 6 月に覚醒剤取締法違反で逮捕された高知東生が所持していた覚醒剤成分と限りなく一致していたようだ」「警察はこの事実をもとに捜査し、早い段階で須藤容疑者と高知東生の入手ルートが同じではないかと疑って捜査していた」「高知の事件では、当初、高知自身が覚醒剤を入手していたが、途中から入手困難となり、一緒に逮捕された女性がインターネットで別の売人を探して入手していた」「“高知ルート”にぶち当たってもおかしくない」など、全く無関係な高知東生氏を何度も引き合いに出し、まるで高知氏が事件に関係があるかのような書き方がなされています。

事実 SNS 上では、「高知東生ルート ちょっと見ない間に密売人になってたのか」「ドンファン殺した女と高知東生とヤクザが繋がってた。ビックリした」「高知東生のつながりか?」などというコメントが見られ、既に謂れのない誤解が広がっています。

高知氏は、ご自身の薬物事件に関して捜査に全面協力し、すでに罪を償い執行猶予期間も終え、社会復帰をとげています。
また、高知氏はご自身の薬物問題についてなんら隠すことなく正直に語り、薬物依存症という病気からの回復者として啓発活動に積極的に関わっておられます。高知氏のこうした並々ならぬ努力により、同じ問題に苦しむ多くの人々が救われています。
上記記事は、高知氏のこうした社会貢献の姿勢を無にし、名誉を傷つけるだけでなく、社会復帰を阻害することにもなりかねません。

日本社会では、「覚せい剤やめますか、それとも、人間やめますか」に代表される断罪的な乱用防止活動が長期間行なわれており、その弊害として、薬物事犯を起こした人に対しては、尊厳を貶めどんな扱いをしても構わないという名誉毀損や人権侵害が根付いています。この偏見が社会復帰を阻害する元凶となっており、この記事はとても看過できません。

貴社も所属する一般社団法人日本新聞協会の新聞倫理綱領 人権の尊重には、「新聞は人間の尊厳に最高の敬意を払い、個人の名誉を重んじプライバシーに配慮する。報
道を誤ったときはすみやかに訂正し、正当な理由もなく相手の名誉を傷つけたと判断したときは、反論の機会を提供するなど、適切な措置を講じる。」と規定されており、今回の記事は明らかにこの倫理綱領に反するものです。
つきましては、当ネットワークは貴社に以下の対応を求めます。


1.2021 年 4 月 29 日に配信された「ドン・ファン妻 須藤早貴容疑者『高知東生ルート』で覚醒剤入手か 成分ほぼ同一」をインターネット上から早急に削除すること。
2.同記事により高知東生氏の名誉を傷つけ、誤解を生んだ旨、謝罪記事を早急に掲載すること。
2021 年 5 月 10 日までに、メールもしくは FAX で、事務局あてにご返答ください。

最近では、貴紙による依存症の啓発記事も度々見られ、依存症の当事者・家族・支援者の間で評価も高まっていた折りに、この記事は大変残念です。
貴社の誠実な対応に期待しています。

以上

依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク(発起人 50 音順)
今成 知美 特定非営利活動法人 ASK(アルコール薬物問題全国市民協会) 代表
上岡 陽江 特定非営利活動法人 ダルク女性ハウス 代表
近藤 恒夫 日本 DARC 代表
斎藤 環 筑波大学 医学医療系 社会精神保健学 教授
佐原 まち子 一般社団法人 WITH 医療福祉実践研究所 代表理事
田中 紀子 公益社団法人 ギャンブル依存症問題を考える会 代表
信田 さよ子 原宿カウンセリングセンター 所長
松本 俊彦 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所薬物依存研究部 部長
森田 展彰 筑波大学 医学医療系 社会精神保健学 准教授
横川 江美子 特定非営利活動法人 全国薬物依存症者家族会連合会 理事長

 

 

取材・お問合せは

03-3555-1725 まで

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