依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク

第1回「グッド・プレス賞」表彰式のご報告

2018年7月4日、「依存症問題 グッド・プレス賞2017」の表彰式を日経カンファレンスルーム(東京都千代田区)にて行いました。
この賞は、依存症問題の正しい啓発に尽力されたメディアの方々に感謝の賞をお送りする目的で「依存症の正しい報道を求めるネットワーク」が設立いたしました。
第1回となる本年度は2017年1月1日~12月31日までの掲載・オンエアが対象です。

当日は、多くの方々にご参加いただき、盛況のうちに終了することができました。
ここに、受賞者の方々をご紹介するとともに、第2部「有識者による座談会」の様子をご報告させていただきます。(敬称略)

受賞者の方々の記念撮影

受賞者の方々の記念撮影

依存症問題の正しい報道を求めるネットワークのメンバー

依存症問題の正しい報道を求めるネットワークのメンバー

盾

<新聞部門>

信濃毎日新聞社
「つながりなおす 依存症社会」全67回

単行本化されましたので、こちらでお読みいただけます。
『依存症からの脱出:つながりをとりもどす』(海鳴社)

3名の担当記者のうち2名にお越しいただきました。「連載が始まった途端に、うちもそうだったという声が届いた」と稲田 俊記者。河田 大輔記者は「こういったメディアの賞は色々ありますが、当事者、家族から賞を頂いたということは嬉しい」と話されました。
この連載は、日本科学ジャーナリスト会議による「科学ジャーナリスト大賞2018」も受賞されています。




読売新聞大阪本社
「関西発:伴走記 アルコール依存症の現場から」全26回

サイト上でお読みいただけます。
「伴走記 アルコール依存症の現場から」

連載は「うちの父はアルコール依存症だった」という上村 真也 記者の告白から始まります。そして最終回は「この連載は、父との伴奏でもあった」という言葉でしめくくられています。受賞のご挨拶では「自分の想いをぶちまけて書いてしまおう、だからこそ伝わることもあると思った」と話されました。




日刊スポーツ
「喫緊の課題!ネット&スマホ、薬物依存」全31回

サイト上でお読みいただけます。
「喫緊の課題!ネット&スマホ、薬物依存」

文化社会部長の久我 悟さんが「社会面は日刊スポーツの良心と呼ばれていて、うちの新聞はそこしか良い事書いてないけど、けっこう読まれているんです。やった甲斐がありました」とユーモアたっぷりのご挨拶。担当された医療ライターしんどうともさんはていねいに取材を積み重ねられ、薬物問題は犯罪ではなく健康問題として扱うべきというWHOの指針、薬物報道ガイドラインも伝えて下さっています。



<ラジオ部門>

TBSラジオ
荻上チキ・Session-22「薬物報道ガイドラインを作ろう!」
サイト上で音声配信がお聴きになれて、書き起こしもお読みいただけます。
「薬物報道ガイドラインを作ろう!」荻上チキ×松本俊彦×上岡陽江×田中紀子▼2017年1月17日(火)放送分

「自殺のガイドラインのように、薬物報道にもガイドラインを作ろう!」という目的で、パーソナリティ・荻上チキさんの案を元に、番組内でリスナー、当会発起人も参加して、ガイドラインを作成する新しい試みでした。表彰式には荻上チキさん、プロデューサーの長谷川 裕さん、ディレクターの金井 渉さんにお越しいただきました。

この番組は、放送批評懇談会による「第54回ギャラクシー賞ラジオ部門大賞」も受賞されています。

<テレビ部門>

NHK Eテレ
ハートネットTV「シリーズ・依存症」

ホームページで番組紹介をご覧いただけます。
第1回 ギャンブル依存症 —孤立する当事者と家族—
第2回 クレプトマニア —罰だけでなく治療を
“依存症” —家族はどうすればいい?

表彰式には番組から中野 淳アナウンサーがお越し下さり、「この番組を担当する前は、依存症といってもピンと来ていませんでした。しかし他人事ではないとわかりました。これからは、この問題を積極的に伝えていきたいと思っています」とお話しくださいました。

<雑誌部門>

文藝春秋
Number 清原和博「告白」

サイト上でバックナンバーが紹介されています。
Number 930号 清原和博「告白」
単行本化も予定されています。(2018年7月28日発売予定)
『清原和博 告白』(文藝春秋)

編集部の鈴木忠平さんは「医学的な見地や社会問題として依存症を扱おうとしておらず、清原さんに人間的な関心があり、スポーツメディアの使命としてインタビューを掲載した。この賞を頂いていいのかな?という思いはあった」とのこと。当ネットワークからは「依存症者を貶めることなく書くという、その人間的なアプローチにこそ価値があると思います」というやりとりがありました。この特集のあと、清原さんの連載が始まり、全国の依存症者の方から、自分と重なるところがあるというメッセージが届いたそうです。

受賞された方々の想いを伺ううちに、会場に一体感が生まれたように思います。
メディアによる報道の力は大変大きいものです。依存症という難しいテーマに挑んでくださったメディアの皆様に改めて感謝申し上げます。

第二部 「有識者による座談会」

<タイトル>マスコミにぜひ知ってほしい!~これが依存症問題報道のポイント~
<コメンテーター>
・斎藤 環 (精神科医:筑波大学 医学医療系 社会精神保健学 教授)
・信田 さよ子 (臨床心理士:原宿カウンセリングセンター 所長)
・松本 俊彦 (精神科医:国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所薬物依存研究部 部長)

コメンテーターから一言

斎藤 環
現在、ひきこもりというのは依存症モデルで治療するという動きが広がっています。
ひきこもり問題もマスコミとの闘いだったんです。2003年に新潟で起きた監禁事件によって、ひきこもり問題について悪い印象がつきそうだったんですね。
そこでそうじゃないということに走り回ったので、その時にマスコミ対策は非常に重要だと学びました。そんな自分の経験が皆さまの参考になったらと思います。

松本俊彦
僕は、専門家を育てることよりも、実は一般の人達に依存症のことを分かって頂くことの方が、ずっとずっと大事じゃないかと思っているんです。結局法の解釈なんていかようにも変わるもので、世論にどのような空気感があるかなんです。
だから世論に一番影響を与えるものって何だろう?と考えると、やっぱりマスメディアなんですよね。マスメディアを責めているだけでなく、正しい報道をしてもらって、国民のリテラシーを高めていく、そんなことが必要だなと考えています。
信田さよ子
私は70年代からなので一番業界長いと思うんですけど、当時は医者達が一生懸命メディアに対して「病気なんですよ」と言っていたけど、それが結局「意思の問題」という風に書かれてしまって、裏切られるというのを見てきました。
メディアの論調は依存症の人の人格を貶めるものという風潮がありましたが、今日のこのグッド・プレス賞を見ていて、確実に時代が変わってきたかなと思いました。
それだけ依存症が身近になってきたのかなと思います。
そんな中で、このグッド・プレス賞は新しい依存症時代の幕開けになっているのかなと思いました。

斎藤 環

信田さよこ

松本 俊彦

受賞者の鈴木さんからも質問

 

(了)

取材・お問合せは

03-3555-1725 まで

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