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報道の責任を問うことが目的ではありません。

マスメディアが「情報の架け橋」として機能し、世の中の依存症問題が改善されていくことを目指して、私たちの実感をもとに声を上げていきたいと思います。 ご理解、ご協力をよろしくお願いいたします。

最新情報

依存症問題のより良い報道の実現に向けて ぜひ、専門家や関係団体と意見交換の場を設けてください

「依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク」(以下、当ネットワーク)は、依存症の回復支援に取り組む当事者・家族・治療者・研究者ら有志で2016年7月に結成した団体です。マスメディアが「情報の架け橋」として機能し、世の中の依存症問題が改善されていくことを願って活動しています。今回の要望に関しては、20関連団体・学会から賛同を得ており、連名で要望させていただきます。 貴協会・連盟はこれまで、メディアスクラムや災害時の報道、新型コロナウイルスの差別偏見問題等に対し、専門家との真摯な意見交換を通して、時代に応じた取材・報道にアップデートされてきました。誤解や偏見に晒されがちな依存症問題についても、ぜひ、意見交換の場を設けていただけないでしょうか。その上で貴協会・貴連盟のご見解を「声明」などの形で公表いただければ、より良い報道の実現に向けて、各報道機関によるルール作りの呼び水になると期待しております。 依存症への誤解や偏見をなくし、回復を支える社会を実現するためには、報道機関の理解や協力が不可欠です。建設的な対話に向けて、我々も最大限の協力をさせていただく所存です。 前向きなご回答を強く望みます。

【依存症問題と報道の現状】
アルコール・薬物・ギャンブル等の依存症は、誰もがなる可能性がある、もっとも身近な病気の一つです。一方で、本人の意思のみで治すことは難しく、周囲からは理解が難しい病気でもあります。「だらしがない」「意志が弱い」「人格の問題」といった誤解・偏見は根強く、当事者や家族、支援者らは、病気そのものだけでなく社会的スティグマとの戦いも強いられてきました。
その反省から、2013年に「アルコール健康障害対策基本法」、2018年に「ギャンブル等依存症対策基本法」が成立し、薬物等も含め、各省庁や関連団体、専門家らが、「回復できる病気であり、一人で悩まず相談してほしい」と社会に呼びかけ働きかけてきました。
けれども、ときにメディアの報道は、この地道な啓発を打ち消してしまうのです。 当ネットワークの発足は2016年、芸能人や有名スポーツ選手の薬物事件などをめぐって、偏見や無理解に基づくバッシング報道が続いたことに端を発します。2017年2月「薬物報道ガイドライン」を公表し、薬物問題への節度ある報道を求めました。さらに、2018年には「依存症報道グッド・プレス賞」を創設し、依存症への理解を助ける優れた報道を表彰するとともに、報道の第一線に立たれる皆様と建設的な意見交換を重ねてきました。このような活動の中で、依存症を正しく伝え、回復を後押しする報道が着実に増えてきていることも実感しています。 一方で、残念ながら、依存症への誤解や偏見を助長し、回復や社会復帰の阻害にもつながりかねない報道が散見されることも事実です。今年5月には、回復施設「木津川ダルク」(京都府)において入所者が覚醒剤取締法違反容疑で逮捕される事件があり、一部の報道機関は実名で報道しました。治療中の依存症者が再使用することは、回復プロセスの中でよく起きることです。使用を繰り返しながら、仲間とつながることで回復の糸口を見つけ、新しい生活を歩んでいく回復者も多くいます。今回の一部報道は、ダルクが犯罪集団であるかのような偏見を強め、入所者やその家族を、より厳しい立場に追いやる結果となっています。 事件報道における「実名報道」の意義は理解できる一方で、貴協会・貴連盟は「人権の尊重」の原則も掲げておられます。回復途上の依存症者を名指しで批判し、デジタルタトゥーで就職等へのハードルを上げることが、はたして適正な報道のあり方なのか、今一度、考えていただきたいというのが我々の切なる願いです。 実名報道は、日本大学アメリカンフットボール部の大麻所持問題に関しても大々的に行なわれました。神戸でコカインを使用した疑いで逮捕された大学生5人も実名報道でした。依存症かどうかに関わらず、薬物問題の報道ではこの傾向が強く見られます。
また、米・大リーグ選手の通訳者によるギャンブル問題等、社会的な耳目を集める多くの事象の背景には依存症問題がありますが、依存症報道を巡る明確な報道基準やルールが定められていないためか、各社の報道にはばらつきが大きく、報道の仕方によっては、人格非難や社会的排除をエスカレートさせてしまいます。その一方で、依存症問題への理解を深める啓発的な報道もあるのです。 人権を尊重し回復の視点をもった報道とは何か。ぜひご一緒に考えていただけないでしょうか。 6月中に何らかのご回答をいただければ幸いです。

大学における薬物事件の実名顔出し報道に関する緊急要望書 2023年12月1日

私たちは、 日本の薬物問題、また依存症対策に関わる者として、 現在起きている日大アメフト部の大麻所持事件に対する報道について危機感を抱き 、 マスコミ各社にこの度の要望書を提出することと致しました。
 今回の日大アメフト部の大麻所持事件では、 学生の 1 人がわずか 0.019gの大麻片を所持していたことから端を発し、大学の経営陣の内紛等も絡めて必要以上に大きく報道され、繰り返し学生の写真付実名報道が行なわれています。
 また令和 5 年 11 月 27 日に報道された、同アメフト部の 3 人目の逮捕に至っては、 大麻取締法違反ではなく、 麻薬特例法違反の罪での逮捕でした。 軽微な犯罪にもかかわらず、実名・顔写真報道を繰り返すのは甚だしい人権侵害です。 これら実名報道により 学生達の実家や人間関係まで暴かれさらされることになりました。
 大麻他、 薬物の個人によ る 少量の自己使用については、先進国ではすでに犯罪者として扱うのではなく、 人権に基づく公衆衛生アプローチへと切り替えています。 2023 年 6 月 23 日には国連人権高等弁務官事務所が国際社会に対し声明を発表し、 「個人のための薬物使用と所持は緊急に非犯罪化されるべき 」であるとし、違法薬物犯罪の扱いについて処罰を支援に置き換え、人権を尊重・保護する政策を推進することを求めましたが、日本の政策はこ の国連の声明に逆行する動きをと り、マスコミも政府の動きを増長させています。
 しかしながら 大麻の所持に対し島根県警では、 県内の警察署勤務の男性巡査長(26)を大麻取締法違反(所持)の疑いで書類送検し、懲戒免職処分にしましたが、同県警は証拠隠滅や逃亡の恐れがないなど「総合的な判断」として逮捕せず、 若い職員の未来を考えプライバシー保護を理由に名前や勤務場所も公表しないという判断を下しました。
 こういった英断を下す組織がある一方で、 日大アメフト部の事件では、 理事長が有名女性作家であることも影響し学内で内紛が勃発、そのため報道が面白おかしく過熱していき、連日逮捕された学生の実名・顔出し報道がなさ れるという事態に陥っています。
 マスコミの皆さんは、未来ある若者が大麻の自己使用という微罪でデジタルタトゥーが残り、 将来にわたって教育や就職の機会が奪われてしまうという二次被害が起きぬよう配慮して頂きたいと思います。


既にご承知のことと思いますが、「日本民間放送連盟 報道指針」には、 以下のように記されています。
3.人権の尊重
(1) 名誉、プライバシー、肖像権を尊重する。
(2) 人種・性別・職業・境遇・信条などによるあらゆる差別を排除し、人間ひとりひとりの人格を重んじる。
(3) 犯罪報道にあたっては、無罪推定の原則を尊重し、被疑者側の主張にも耳を傾ける。 取材される側に一方的な社会的制裁を加える報道は避ける 
(4) 取材対象となった人の痛み、苦悩に心を配る。事件・事故・災害の被害者、家族、関係者に対し、節度をもった姿勢で接する。集団的過熱取材による被害の発生は避けなければならない。
(5) 報道活動が、報道被害を生み出すことがあってはならないが、万一、報道により人権侵害があったことが確認された場合には、すみやかに被害救済の手段を講じる。


 私ども、 依存症問題に関わる当事者・ 家族・ 支援者は、 捜査機関が大麻の個人所持の逮捕者を、報道機関に個人情報を提供すること 、また報道機関が捜査機関に逮捕者の個人情報提供を求める ような現在の姿勢を改めて頂くことを強く望みます。
 報道の自由も大切ですが、この国の未来を考えれば、何よりも若者の再起に配慮することが優先されるべきだと考えます。
 現在行われている「薬物事犯には何をやってもいい」という、 さらし者のような報道のあり方を早急に改善して頂くことを要望致します。

株式会社東京スポーツ新聞社への要望を提出

依存症問題の正しい報道を求めるネットワークは、2021年4月29日付記事に対し、同年4月30日に株式会社東京スポーツ新聞社に対し要望書を提出しました。
以下は、そのテキストになります。

「高知東生ルートで覚醒剤入手か」の記事に強く抗議し、削除と謝罪訂正を求めます

「依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク」は、依存症支援に取り組む団体と専門家が 2016 年に立ち上げたネットワークです。人権侵害に及ぶ過剰な薬物報道を受け、2017 年には「薬物報道ガイドライン」を作成、2018 年には依存症啓発に役立つ報道に対する「グッド・プレス賞」を発足させるなど、依存症の偏見是正に取り組んでいます。

2021 年 4 月 29 日に東スポ Web で配信された「ドン・ファン妻 須藤早貴容疑者『高知東生ルート』で覚醒剤入手か 成分ほぼ同一」の記事は、事件となんら関係ない高知東生氏に対する名誉毀損であると同時に、違法薬物問題に対する誤解や偏見を助長し社会復帰を阻害するものであり、強い憤りを感じます。

記事では「16 年 6 月に覚醒剤取締法違反で逮捕された高知東生が所持していた覚醒剤成分と限りなく一致していたようだ」「警察はこの事実をもとに捜査し、早い段階で須藤容疑者と高知東生の入手ルートが同じではないかと疑って捜査していた」「高知の事件では、当初、高知自身が覚醒剤を入手していたが、途中から入手困難となり、一緒に逮捕された女性がインターネットで別の売人を探して入手していた」「“高知ルート”にぶち当たってもおかしくない」など、全く無関係な高知東生氏を何度も引き合いに出し、まるで高知氏が事件に関係があるかのような書き方がなされています。

事実 SNS 上では、「高知東生ルート ちょっと見ない間に密売人になってたのか」「ドンファン殺した女と高知東生とヤクザが繋がってた。ビックリした」「高知東生のつながりか?」などというコメントが見られ、既に謂れのない誤解が広がっています。

高知氏は、ご自身の薬物事件に関して捜査に全面協力し、すでに罪を償い執行猶予期間も終え、社会復帰をとげています。
また、高知氏はご自身の薬物問題についてなんら隠すことなく正直に語り、薬物依存症という病気からの回復者として啓発活動に積極的に関わっておられます。高知氏のこうした並々ならぬ努力により、同じ問題に苦しむ多くの人々が救われています。
上記記事は、高知氏のこうした社会貢献の姿勢を無にし、名誉を傷つけるだけでなく、社会復帰を阻害することにもなりかねません。

日本社会では、「覚せい剤やめますか、それとも、人間やめますか」に代表される断罪的な乱用防止活動が長期間行なわれており、その弊害として、薬物事犯を起こした人に対しては、尊厳を貶めどんな扱いをしても構わないという名誉毀損や人権侵害が根付いています。この偏見が社会復帰を阻害する元凶となっており、この記事はとても看過できません。

貴社も所属する一般社団法人日本新聞協会の新聞倫理綱領 人権の尊重には、「新聞は人間の尊厳に最高の敬意を払い、個人の名誉を重んじプライバシーに配慮する。報
道を誤ったときはすみやかに訂正し、正当な理由もなく相手の名誉を傷つけたと判断したときは、反論の機会を提供するなど、適切な措置を講じる。」と規定されており、今回の記事は明らかにこの倫理綱領に反するものです。
つきましては、当ネットワークは貴社に以下の対応を求めます。


1.2021 年 4 月 29 日に配信された「ドン・ファン妻 須藤早貴容疑者『高知東生ルート』で覚醒剤入手か 成分ほぼ同一」をインターネット上から早急に削除すること。
2.同記事により高知東生氏の名誉を傷つけ、誤解を生んだ旨、謝罪記事を早急に掲載すること。
2021 年 5 月 10 日までに、メールもしくは FAX で、事務局あてにご返答ください。

最近では、貴紙による依存症の啓発記事も度々見られ、依存症の当事者・家族・支援者の間で評価も高まっていた折りに、この記事は大変残念です。
貴社の誠実な対応に期待しています。

以上

依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク(発起人 50 音順)
今成 知美 特定非営利活動法人 ASK(アルコール薬物問題全国市民協会) 代表
上岡 陽江 特定非営利活動法人 ダルク女性ハウス 代表
近藤 恒夫 日本 DARC 代表
斎藤 環 筑波大学 医学医療系 社会精神保健学 教授
佐原 まち子 一般社団法人 WITH 医療福祉実践研究所 代表理事
田中 紀子 公益社団法人 ギャンブル依存症問題を考える会 代表
信田 さよ子 原宿カウンセリングセンター 所長
松本 俊彦 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所薬物依存研究部 部長
森田 展彰 筑波大学 医学医療系 社会精神保健学 准教授
横川 江美子 特定非営利活動法人 全国薬物依存症者家族会連合会 理事長

 

 

電気グルーヴ ピエール瀧氏の出演作品に対する撤収・放映及び公開自粛・撮り直し等の措置の撤回を求める要望書

依存症問題の正しい報道を求めるネットワークは、2019年3月25日付で現在
電気グルーヴ ピエール瀧氏の出演作品に対する撤収・放映及び公開自粛・撮り直し等の措置の撤回を求める要望書
を関連する会社に送付致しました。以下は、そのテキストになります。

松竹株式会社 代表取締役会長 大谷 信義 様 代表取締役社長 迫本 淳一 様 株式会社
セガゲームズ 代表取締役会長CEO里見 治紀 様 代表取締役社長COO 松原 健二 様
株式会社ソニーミュージックエンターテイメント 代表取締役社長 水野 道訓 様
株式会社TBS 取締役会長 武田信二 様 代表取締役社長 佐々木卓 様
日本放送協会 会長 上田 良一 様 (50音順)

2019年3月25日
依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク (事務局 ギャンブル依存症問題を考える会)

電気グルーヴ ピエール瀧氏の出演作品に対する撤収・放映及び公開自粛・撮り直し等の措置の撤回を求める要望書
私たちは日本の薬物問題、また依存症対策に関わる者として、この度、麻薬取締法違反で逮捕された電気グルーヴ ピエール瀧氏の出演作品に対する撤収・放映及び公開自粛・撮り直し等の措置の撤回を求めたく、要望書を提出致します。

現在、厚生労働省が依存症の理解を深めるための普及啓発事業を各地で実施していることは、ご存じかと思います。依存症は回復可能な病気であること、社会の偏見、差別が回復を妨げる大きな障壁であることを、元サッカー日本代表の前園真聖さんをはじめ、多くの著名人、芸能人たちが参加して呼びかけています。3月6日に東京で開かれたイベントでは、清原和博氏が登壇し、自身の体験をもとに「勇気を出して病院へ」と呼びかけました。

*参考:誤解だらけの依存症HPhttps://www.jiji.com/ad/korosho/index.html
資料:愛知県イベント時の厚生労働省プレスリリース(2019年2月23日)
清原氏イベント登壇時記事(毎日新聞

その矢先に起きたのが、ピエール瀧さんのコカイン使用による検挙でした。そして、過去の出演作の映画、テレビドラマ、DVDなどの放送・販売・上映などの自粛が相次ぎました。

こうした処置は、「犯罪者を金儲けの手段にするな」といった批判を警戒した苦渋の策なのでしょうが、私たちには薬物事犯となった芸能人へのあまりにも厳しすぎる制裁に思えます。

その過剰な対応が当事者や家族、そして社会の意識に及ぼす悪影響を想像して頂ければと思います。
検挙された芸能人やアーティストは、活躍中の人であればあるほど、多額の賠償金を請求されるなどして、経済的に大きな負担を抱えます。これまでの同様事案ではほとぼりが冷めたころに「自粛解除」となることが通例ですが、当事者は司法的に処罰されること以外に、あまりにも大きなダメージを負います。
仕事の表舞台から排除され、ワイドショーなどで悪のイメージが繰り返し強調されることによって、重大な犯罪というイメージが必要以上に増幅されています。その配偶者や子どもも、周囲から白眼視されることになります。

そうした空気は、薬物使用が発覚したら社会的に抹殺されるという恐怖感が煽られ、相談や支援に繋がる勇気を阻害し、孤立を招き、問題を悪化させていきます。

依存症が回復可能な病気であることを多くの人に知ってもらい、それを応援していく流れを作りだしていくことはマスメディアの使命だと思うのですが、「自粛という名の制裁」はあまりに相反する行動ではないでしょうか。

欧米など、諸外国でも俳優やアーティストの薬物問題が発覚することは珍しくはありませんが、それにより出演作品の販売や公開が自粛された例はありません。

日本でも大ヒットした海外人気ドラマ「フレンズ」に出演したマシュー・ペリー氏は薬物依存症に陥りましたが、撮影中2度もリハビリ施設に入寮しながらも出演は継続されました。
そして、マシュー・ペリー氏は見事に回復を果たし、のちに依存症者の支援を積極的に行い、その功績が認められてオバマ大統領から表彰もされました。

また同じく日本でも大人気となった海外ドラマ「フルハウス」に出演していたジョディ・スウィーティン氏は、覚せい剤の依存症となり苦しみましたが、「フルハウス」で共演したオルセン姉妹らの激励により、リハビリ施設に入寮し回復しています。

そしてこの「フルハウス」のリブート版「フラーハウス」の撮影中に、出演者の一人ジョン・ステイモス氏がひどいアルコール依存症になっていることを知ったジョディ・スウィーティン氏は、自分の経験を生かし「フラーハウス」の撮影セットの中で、アルコール依存症の自助グループ「AA」のミーティングを行い、断酒をサポートしました。
こうしてジョン・ステイモス氏は現在も断酒を継続しており、自分の回復はジョディ・スウィーティン氏のお陰と発言しています。

日本では、これとは真逆に「罰すること」「懲らしめること」「辱めを与えること」で、薬物問題に効果があったかのような誤った考えがあるように思えます。
刑罰以外にも民間人による自粛や撤収、撮り直しといわれる実質的な制裁措置が常態化してしまえば、薬物問題は解決どころか弊害の方がますます大きくなっていきます。メディアの方々が、薬物依存の問題への理解を深め、現在の制裁措置を取り止めて頂けるよう強く要望するものです。

  1. 松竹株式会社(代表取締役会長 大谷 信義 様 代表取締役社長 迫本 淳一 様)は映画「居眠り磐音」を、代役で撮り直すことなく、オリジナル作品を公開して下さい。
  2. 株式会社 セガゲームズ(代表取締役会長CEO里見 治紀 様 代表取締役社長COO 松原 健二 様)は、プレイステーション(PS)4用のゲームソフト「JUDGE EYES:死神の遺言」の販売自粛を解除して下さい。
  3. 株式会社ソニーミュージックエンターテイメント(代表取締役社長 水野 道訓 様)は、電気グルーヴの CD、映像商品の出荷停止、 CD、映像商品の店頭在庫回収、音源、映像のデジタル配信停止を解除して下さい。
  4. 株式会社TBS(会長 武田信二様、代表取締役社長 佐々木卓様)は、既に収録済みである「ゲンバビト」を放映して下さい。
  5. 日本放送協会(会長 上田 良一 様)は、NHKオンデマンドの「大河ドラマ いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~ 第4~8回、第10回」「連続テレビ小説 とと姉ちゃん(シリーズ全作)」「連続テレビ小説 とと姉ちゃん『もうひとつの物語“福助人形の秘密”』」「連続テレビ小説 あまちゃん(シリーズ全作)」「大河ドラマ 龍馬伝(シリーズ全作)」「土曜ドラマ『55歳からのハローライフ』(シリーズ全作)」の配信を停止を解除して下さい。

以上

依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク(発起人 50音順)
今成 知美
特定非営利活動法人 ASK(アルコール薬物問題全国市民協会) 代表

上岡 陽江
特定非営利活動法人 ダルク女性ハウス 代表

近藤 恒夫
日本DARC 代表

斎藤 環
筑波大学 医学医療系 社会精神保健学 教授

佐原 まち子
一般社団法人 WITH医療福祉実践研究所 代表理事

田中 紀子
公益社団法人 ギャンブル依存症問題を考える会 代表

信田 さよ子
原宿カウンセリングセンター 所長

松本 俊彦
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所薬物依存研究部 部長

森田 展彰
筑波大学 医学医療系 社会精神保健学 准教授

横川 江美子
特定非営利活動法人 全国薬物依存症者家族会連合会 理事長

テレビ朝日『相棒 season 17』第4話への要望書を提出

依存症問題の正しい報道を求めるネットワークは、2018年11月15日付で株式会社テレビ朝日に対し要望書を提出しました。
以下は、そのテキストになります。

株式会社テレビ朝日
代表取締役社長 角南源五 様

私たちは、日本の薬物問題、また依存症対策に関わる者として、テレビ朝日『相棒 season 17』第4話での覚せい剤依存症者への差別的な演出について、強い憤りを感じています。

子どもが遊ぶ白昼の公園に突然、白目をむいたゾンビのような風体で現われ、いきなり警官をハンマーで撲殺し、取調室では「シャブ山シャブ子」と名乗り、幻覚でも見ているかのようなしぐさをする……これは、覚せい剤依存症の実態からはかけ離れた、異様な演出です。
登場時間はわずか1分ほどでしたが、あまりにも衝撃的だったため、放送直後からネットでは「マジ怖かった」「怖すぎて、物語に集中できなくなった」といった感想が書き込まれ、「シャブ山シャブ子」という言葉は、Twitterのトレンドワードに入るほど広がりました。

日本社会では、「覚せい剤やめますか、それとも、人間やめますか」に代表される断罪的な乱用防止活動が長期間行なわれており、その弊害として「覚醒剤依存症者=凶悪な犯罪者」といった偏見が根付いて、あちこちで回復施設の排斥運動が起きています。
今回の「シャブ山シャブ子」はまさにこれを映像化したようなもので、偏見・差別・排除がさらに助長され、早期支援・回復・社会復帰の妨げとなることを、私たちは憂慮しています。

私たち「依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク」では、人権侵害に及ぶ過剰な薬物報道を受け、2017年には「薬物報道ガイドライン」を作成、2018年には、依存症啓発に役立つ報道に対する「グッド・プレス賞」を発足させるなど、活動を行なってきました。
厚生労働省においても依存症への偏見を取り除く啓発事業を実施していますし、法務省も薬物依存症からの回復のための地域支援について、連携のガイドラインを作成しています。
今回の演出が、これらの懸命な努力を無にするものであることをご理解ください。

日本民間放送連盟「放送基準8章 表現上の配慮」に以下の規定があります。(56)精神的・肉体的障害に触れる時は、同じ障害に悩む人々の感情に配慮しなければならない。
『相棒』は視聴者から高い評価を受けている人気番組です。
その社会的影響力の大きさを自覚され、回復措置として以下の対応をされるよう求めます。

1.『相棒 season 17』における覚せい剤依存症者の描写が不適切であり、人権侵害であったことを、同番組内および貴社ホームページ等において謝罪すること
2.同番組ホームページ内に、薬物依存症が回復可能な病気であること、相談機関や回復の社会資源などについての情報を掲載すること

加えて、報道機関として、依存症全般の正しい理解を広める報道を今後も期待しています。

依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク
(発起人 50音順)
今成 知美
特定非営利活動法人 ASK(アルコール薬物問題全国市民協会) 代表

上岡 陽江
特定非営利活動法人 ダルク女性ハウス 代表

近藤 恒夫
日本DARC 代表

斎藤 環
筑波大学 医学医療系 社会精神保健学 教授

佐原 まち子
一般社団法人 WITH医療福祉実践研究所 代表理事

田中 紀子
公益社団法人 ギャンブル依存症問題を考える会 代表

信田 さよ子
原宿カウンセリングセンター 所長

松本 俊彦
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所薬物依存研究部 部長

森田 展彰
筑波大学 医学医療系 社会精神保健学 准教授

横川 江美子
特定非営利活動法人 全国薬物依存症者家族会連合会 理事長

以上

取材・お問合せは

03-3555-1725 まで

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